1.【観戦記】EFL チャンピオンシップ(英国2部) Match 37 スウォンジーシティ vs WBA
初めまして、ErnestYukioです。
現在20代の折り返しちょっと過ぎ、何を血迷ったかサラリーマンを辞め、現在イギリスでサッカーと勉学に囲まれる生活を送っております。
サッカー観戦が習慣となってしまいました。
プレミアリーグは世界中どこでも見れるという事で、目下屋台のハンバーガーを食べながら、英国下部リーグをひたすら行脚しているところでございます。チケットの束はもう数十枚。
というわけで、このブログで英国(たまに世界)の下部リーグの魅力を少しでも伝えていけたらと思います。
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さて、英国での生活も約半年を経過。英国北部や諸外国の方々のアクセントにも慣れてきた今日この頃。
日本がコロナウイルスで大変だとか言っていたら、イギリスも徐々にざわざわとしてきた。
「ただの風邪だろ」と言っていた学校の先生は、患者が百人を超えた数日前から急に授業前後の握手をやめたりと、極端かつ淡白。
そんななか、手続きの問題でなかなかコーチとしてベンチ入りさせてもらえない少年チームの試合後、すぐに電車に飛び乗り、遠路はるばるスウォンジーへ。
スウォンジーといえば現レスターのブレンダン・ロジャース、ベルギー代表監督のロベルト・マルティネスが以前監督をしていた由緒正しきウェールズのクラブチーム。
昨シーズン、グレアム・ポッター(現ブライトン監督、心理学の学位を持っている)が作り上げた、スウェーデンリーグ(当初4部のチームをELノックアウトラウンド出場まで導いた)仕込みのアタッキングサッカーを、3年前U-17イングランド代表を優勝に導いたスティーブ・クーパー(常に眠そうな顔をしている)がどのように進化させるのか、シーズン序盤は非常に注目されていました。
FWボルハ・バストン(昨シーズンアラベスで乾とチームメイト、冬の移籍でPLアストンヴィラへ)、アンドレ・アイェウ(元ガーナ代表)、ベルサント・ツェリナ(コソヴォ代表)など癖しかない攻撃陣をひっさげ開幕スタートダッシュに成功したものの、現在10位。第3節も観戦した身としては、どのような変化が起きたのか注目です。
一方の対戦相手はウエストブロムヴィッチアルビオン(WBA)。我らが稲本潤一が昔所属していましたね。
現在首位リーズを追いかける2位と、さすがは昇格降格を繰り返すチームらしい、安定したパフォーマンス。
今シーズン1試合も観た事はなかったのですが、前情報としては名将スラヴェン・ビリッチ(元クロアチア代表DF、同国代表監督、一時期ロックバンドでも活動)の下、FWハル・ロブソン=カヌー(ウェールズ代表、2016年EUROで魅せたクライフターンはなぜかロブソン=カヌーターンとしてウェールズサッカー協会のコーチ教本に載っている)、DFキーラン・ギブス(アーセナル時代冤罪レッドカードを喰らった)、FWチャーリー・オースティン(元祖ゴールマシン)など、2部リーグとは思えないタレントを要し、目下再びのプレミアリーグに向けて奔走中です。
<試合概要>
さあ、スターティングメンバーは以下の通り。
SWAはDMF/CMのグライムス、トップ下のギャラガー(チェルシーアカデミー出身)とFWブリュースター(リバプールからレンタル)、アイェウを中心とした1-4-2-3-1の配置。あまりDF陣に関する情報がないため、どのように昇格筆頭候補の WBA相手に立ち回るのか、注目です。
WBAは モダンな1-4-1-2-3の布陣。テクニカルな選手を輩出してきたクロアチアが誇るロックギタリスト、ビリッチが率いるチームですから、英国名物キックアンドラッシュはおそらく採用していない予想。注目は LWGのカラム・ロビンソンで、彼は1部PLのシェフィールドUから移籍してきた万能型ストライカー。あとはロブソン=カヌー、ギブス、オースティンやリバモア(PLにいたころのハルにいた記憶)以外よく知りません。控えのグロシツキ(ポーランド)は2018年ワールドカップで日本と対戦した爆速ウィンガー。冤罪ギブスもしっかりとベンチです。
さすがはPLのお膝元、前半からどちらも攻守のプレースピードでインテンシティの高さを見せつけます。
WBAは案の定英国名物に一切の興味関心を示さず、2CB +1FB+ DMFたまに +CMでクリーンなビルドアップを狙います。2CMと2WGにボールを預け、じわじわと相手DFブロックを崩していく最近流行りのクロアチアンスタイル(よくわかりません)を徹底。いわゆるハーフスペースをCMもしくはWGで狙っていき、SBのワイドスペースへのランニング、あるいはFWのゴール前への飛び出しからニアゾーンでの折り返し、ゴールゲットという攻め方が多く見られました。
DMFのソーヤーズがSBを押し上げるために下がってビルドアップに参加することもあり、この辺りのローテーションは流石ロッケンローラービリッチ、相手のDFブロックを崩すために設計しているなという印象。
また最前線は3FW + 1CMでラインを作ると、そこから相手ライン間に選手がポジションを取り、相手DFを引き出し相手DFラインにギャップを作ろうとするトライが多く見られ、大好きだった昨シーズンの京都パープルサンガをふと思い出しました。
WBAのDFはブロックをつくるよりは、前に押し込んでからロングボールを蹴らせ、2CBの1対1でボールを取りきるという強気な戦略。アジャイとバートリーともに強くて速い系CBのため、うまくはまっているような印象でした。
一方のSWAはWBAのゴールキックを守備の起点とし、最前線からマンマークでボールを奪う作戦にでます。しかしSWAのSBが背後のスペースを警戒しすぎてか、WGに対してプレスをかけられず、面白いようにWBAのWGやCMにボールが収まります。ミドルゾーン以下での守備も、前述のWBA最前線の落ちる動きにプレスを掛けられず、結果ライン間で前向きでボールを持たれる機会が多くなり、ピンチになる場面が多かったです。
ボールをミドルゾーン以上でなかなか奪えないスウォンジーは4-1-4-1のDFブロックでWBAのパスワークを引っ掛けたあと、WG/SBにボールを預けるorスペースに走らせ、そこから手数を掛けず攻めていくイメージ。ギャラガー、ブリュースター、カルル、アイェウの四人が比較的自由にポジションを取りながら、サイドを崩していました。
ブリュースターは英国大手派遣会社リバプールの大エース、フィルミーノのような万能型ストライカーらしく、若手らしいDFが適当にクリアしたボールも拾ってくれる度量の広さ、足元の技術の高さ、ひたむきさが垣間見られました。
特筆すべきはWBAのプレースピードの速さ。特に中盤以降のパスワークは高速キャッチアンドリリースを徹底しており、SWAのハイプレッシャーを微塵も寄せ付けません。ロブソン=カヌ、ロビンソン、クロヴィノヴィッチ、リバモアあたりのパススピードはトラップしたら捻挫するんじゃないかってくらい速かったです。
昨年チェルシーと川崎Fを灼熱のなか観戦したときも感じたのですが、少なくとも英国の2部くらいまではチームによりますが非常にプレースピードが速い印象。部活のパス練習でやったら先輩からキレられるような速度のショートパスを出しますし、ディフェンス側は相手の足ごと狙うかのごとく全速力でプレスを掛けていきます。ちなみに僕がお手伝いしているサッカースクールでも、「ボールを取るときは相手の皮膚(skin)ごと持っていけ」と7歳の子供達に真剣に教えています。
こんな感じで、WBAがボールとハーフスペース、DFライン間を支配してゲームを進めますが、決定的なチャンスは1、2回程度で、なんとなくSWAも耐え、アイェウ、ブリュースター、ギャラガーのカウンターでチャンスを迎えるも決めきれないという試合展開。
後半になると、SWAは一転相手陣内にボールがある段階から両SBが高めにマンマークを張り、これでWBAは前半ほどSWAのプレスを回避してポゼッションしていく事ができなくなりました。とはいえSWAの攻撃陣もサイドのカルル、アイェウを中心に背後を狙っていきますが、決定的なチャンスとまではいきません。
結果70分過ぎから最初の一手を自然と英国名物にお互い頼るようになり、ファンもボールを早く前に送れと叫び出す始末。気づけばお互いに相手中盤の不用意なボールロストからチャンスを作る→決められないという展開になり、0−0で試合終了。
個人的MOM = クロヴィノヴィッチ(WBA)
理由:CMの脇、DFラインの前に顔を出す動きが秀逸。キック、コントロール、プレイ視野の広さが良。
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WBA、少なくともこの試合は攻守共にコンセプトが観られるいいチームでした。やっぱりCBにスピードがあると、チームとしてできる事が広がるんですかね。
SWAはポゼッション色が思ったよりも薄く、今後どうなっていくのか注目です。
では、また次回、下部リーグの旅は続く。